○市民活動推進について        神奈川県茅ヶ崎市       レポートTOP


 

1.市民活動推進条例

 

 まず、茅ヶ崎市のホームページに掲載されている「市民活動推進条例策定委員会報告」から、条例の期待効果の部分を抜粋、要約して紹介します。

 

 @市民は公共サービスを創造し、担う主体として市と対等。その認識を形成

 A地方分権時代にふさわしい、行政の手の届きにくい分野での公共サービス

  を市民活動の推進により生み出す

 B市民活動の活性化、市民自立の促進で、行政や事業者と市民の協働・連携

  が進み、効果的な公共サービスを提供

 C条例で市民活動の存在価値を担保することで市民が勇気付けられ参加機会

  が増加、活力あるまちづくりが促進

 

 策定委員会は平成1510月に委嘱式でスタート。11回に及ぶ策定委員会、10回の小委員会を経て、平成163月に市長に報告、解散しました。

 メンバーについてはHPを参照ください。

 パブリックコメントを経て最終案を議会提案。平成1741日に施行され

ました。

 条例全文についても、HPを参照ください。

 

 この条例に基づき具体的な活動が、次のように展開されます。

 @協働事業の推進、意見交換会の開催、市民活動団体の登録

 A市民活動推進委員会の設置。市長の附属機関

 B市民活動推進補助制度

 C市民活動推進基金を創設(愛称:「市民活動げんき基金」)

 

条例に規定された「市の施策」は、

 @場所の提供

 A財政的支援

 B情報の収集、提供

 C市、市民活動団体、事業者、市民の交流、連携の推進

 D啓発、学習機会の提供

 E人材の発掘、育成

 Fその他

 

条例に掲げられた「協働事業」の原則は次のとおりです。

 @目的の共有

 A対等性と相互理解

 B自主性・自立性の尊重

 C透明性・公開性の確保

 

市民活動団体の登録の要件は、次のとおりです。

 @市内で主に活動

 A3人以上の役員

 B特定の候補者、政党でない

 C約款又は規約、会則、事業内容、会計などが整っている

 

活動の報告は、市長の附属機関(自治法138条の43項に基づく)である市民活動推進委員会に対して行います。


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2.協働事業

 

条例に基づき、協働事業のテーマを決める意見交換会を持ちます。

そこに上った団体の活動内容を紹介します。

 ○介護予防

 ○福祉情報提供と日々の相談に応じる業務

 ○活動情報、行政情報を常時市民に発信する業務

 ○地域通貨導入業務

 ○NPOの中間支援

 ○農家と連携した資源循環、小学校から出る生ごみの堆肥化事業

 ○温暖化防止

 ○在住外国人のための生活支援

 ○引きこもり、ニートへの相談、支援仲介

 ○子どもの遊び場づくり

 

これらを基に、事業テーマを選定→企画案の公募→公開プレゼンテーション

→団体の決定→契約→実施→評価 の流れをたどります。

 

協働事業に期待される効果は、

 @公共サービスの質の向上

 A市民活動団体の事業力アップ

 B効率的な行政運営

 C職員の意識高揚


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3.「げんき基金」と補助金交付

 

まず、市が原資として1500万円積み立て。(300万円×5年で積算)

市民や事業者から寄附が寄せられた場合、それと同額を市がさらに上乗せして

拠出する(これを「マッチングギフト」という)

これを基に、市民ニーズにあったサービスを提供する市民活動を展開。

このサイクルにより、市民の貢献意欲を高め、市民活動の資金として活用。

原資は5年間でなくなる。それまでに、このサイクルが市民の出資で自立する

ことをねらいとする。

 

補助金交付の対象となる市民活動に認定されるためには、公開プレゼンテーションに応募、市民活動推進委員会による審査を経て、認定されることが必要。

 

18年度に応募のあった事業

・採用されたものの例

 ○発達障害児のための教育療法

 ○移動サービス

 ○安全パトロールや意識向上キャンペーン

 ○就労支援公開講演会の開催

 ○成年後見制度に関する講演会の開催

 ○環境イベント

 ○障害者とその家族による農園

 ○生ゴミ回収、堆肥化の効力実験

 ○放置自転車をスリランカに送る

 ○在住外国人のための英字新聞

 ○園芸福祉ボランティア

 ○ニート、引きこもり相談、交流

 ○カーブミラー清掃

 ○自治会ホームページの研究

 ○車椅子レクダンスパーティ

 ○あいさつの街づくり、パトロール

 ○地域通貨の普及

 

・採用されなかったものの例

 ○わんわんパトロール

 ○山田耕筰の普及研究

 ○ピアカウンセリング

 ○ラクビー祭の開催

(以上はHPによる資料で、採用、不採用の個別の事由は調べていません)

 

公開プレゼンテーションの資料は、大部ですのでここに掲載できません。

茅ヶ崎市より恵与いただいておりますので、ご希望の方にお見せできます。


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4.茅ヶ崎市民活動サポートセンター

 

平成144月設置、公設民営タイプ。開館時間は9:3021:30。毎月第3水曜日と年末年始のみ休館。8人のスタッフのローテーションで常時2人が着任。

 

設立までの経緯は次のとおりです。

平成12年の市民アンケートで、市民活動の「拠点がない」の声。

これに応えるべく駅前商業ビルの借り上げが一旦浮上したが、面積、設備、耐震性などの理由で見送り。

現在地は市有地、旧現業作業員の詰め所用地であったところ、ここを候補地として具体的検討に入る。

平成13年、公募委員、市民活動団体代表などによる「建設検討会」。同11月着工。

平成14年、「センター管理運営委員会」を組織。完工。オープニングフェスタ。

平成17年、指定管理者による管理運営を開始。「管理運営委員会」を「NPO法人サポートちがさき」に名称変更。

 

指定管理者制度の詳細は次のとおりです。

運営経費は年間1,300万円の委託費。加入206団体の「ガイドブック」作成も委託。

協定の中で「成果物は市と使いあう」と明記。信頼しあって運営されている。

建物自体の修繕は、市が負担。例えばコンピューターのウィルスソフトも、NPOの自前とする。

4年間の「基本協定」と「年度協定」の2本立て。

 

業務については次のとおりです。

@市民活動推進に関する情報収集、提供

 ・情報誌を年3回発行〜ニューズレタープロジェクト

 ・イベントの紹介、団体交流の情報提供

 ・市民活動団体ガイドブックの編集・発行〜ガイドブックプロジェクト

 ・市民活動データベースの作成・管理

 ・サポセンターHPの管理

 ・市民団体の発行する機関紙の収集、管理

 ・サポートセンター利用案内の発行

A相談業務

B市民活動団体、市民、事業者、行政の連携推進

 ・講座、講演の開催

 ・市民活動フォーラムの実施

 ・市民活動ネットワーク会議(県下開催)との連携

C視察対応

Dロッカー、レターケース管理運営、ファクス・郵便物の取次ぎ

 →これはセンターの中核をなす重要な仕事と思われた。

E窓口業務、建物・機器の管理

 

施設のレイアウトは、次のとおりです。

○窓口相談コーナー

○作業コーナー(輪転機、コピー、紙折機など)

○情報コーナー

○フリースペース(適度に衝立があり、仕切ることもできる)

○プレイルーム


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5.感想

 

 「経費節減の折から、市役所職員の研修費はほぼゼロ」「視察ならホームページでできる」…ある程度、それはそのとおりだと思います。

 私どもには視察研修に用いる旅費が予算化されており、大変ありがたいと思っています。

 日本全国のどこに視察をすればいいのか、それを絞り込むとき、実は私は各市のホームページを見させてもらいます。また検索エンジンのキーワード検索は非常に役立ちます。

 ホームページは今や「市の顔」と言えますが、今回視察先としてお願いした2市は、そのトップページに「市民活動」の言葉が出ていることで決めました。

 その市が何に力を入れているか、それがはしなくも、HPのトップ画面に雄弁に語られていると、私は最近、とみに感じます。

 自慢するようですが、私の事前調査はかなり徹底しておりますし、前述のような言わば「嗅覚」にも、私は自信を持つようになりました。

 私は例えば先日、小学館から「いのくまさん」という絵本が刊行されたのなら、どうしてそれを市のトップページに出さないのか、などと訴えます。猪熊美術館のページはもちろんのこと、市のトップページに出すことで、私と同じような「嗅覚」を持つ全国の人々は、わが丸亀市に対して「ああなるほど」と、そのバナーを見てなにがしかを感じることでしょう。それが民間出版社から出ているものだから、いけないのでしょうか。それは古き昭和の時代の発想だと思います。

 いきなり余談に走りましたが、そのようなわけで、茅ヶ崎市は私どもの予想したとおり、いなそれ以上の収穫をもたらしてくれました。

 正確に申しますと、それが丸亀市の行政になんらかの形で反映されてこそ、初めて「収穫」と言えるものではありますが。

 

 まず、「市民活動推進課」について。

 これまで広報公聴課の中に「地域活動推進係」があったものを、平成10年に分離。当時は主にイベント、地域のまつりを所管するものとして「市民活動推進課」が設置されたとのことです。トップダウンによるものでした。

 その後平成13年、市民参加という概念が浮上。これに対応すべく、課を新設するのでなく、まさしくその名もふさわしい「市民活動推進課」が、現在のような業務を担当することになった、とのことでした。

 春はどことも総会のシーズンですが、ご多分に漏れず私も先日、地域のコミュニティ総会に出席させていただきました。

 出席メンバーを眺めますと、コミュニティ役員のほか、婦人会、老人会、子ども会、PTAなどなど、多士済々の顔ぶれです。その時ふと思ったのは「みんなそれぞれに、市役所の所管課がちがうんだなあ」ということでした。

 合併があり、それを機に広報紙が従来の自治会配布から業者配布に変更されて2年目に入りました。これとはまた別に、最近しばしば、子どもがいたましい被害に遭うという事件が続いています。これらのことを思い合わせ、十年一日、従来どおりの自治体やコミュニティへの施策を市役所が続けていたのではだめなのではないか、というのが、今回の視察を思い立った背景です。

 丸亀市にも、私どもが以前から提案し続けている「まちづくり推進課」、名称はさらに考えるとして、そうしたセクションがこれら市民活動団体とその活動展開を一本にまとめて対応する、そういうシステムを一日も早く立ち上げなくては、結局市民は「よかれ」と思うこともうまく行動に移せない、そんな困難と混乱に陥っているのではないでしょうか。

 

 次に市民活動サポートセンターについて。

 市役所からほど近く、駅や繁華街からも遠くない位置に立地するサポートセンター。市役所で説明をいただいた後、そこにお邪魔しますと、リーダーたちがまことに親切に、そして熱心な上にも熱心に、その運営状況を説明してくださいました。予定の時刻ははるかに過ぎておりましたが。

 別添写真のほうも参照してください。

 丸亀市にとっては、まず、こうした「拠点」を整備することが大前提である、と考えるよりほかにしようがありません。

 担当者からの詳細なご説明は、実は、いざ丸亀市にもこのような施設を作ろうという機運ができてからでも間に合うことだったのですが、たびたび来られるわけがなく、ぶ厚い資料とともに、細大漏らさず説明を筆記して帰ってまいったつもりです。が、ここではそういう理由により、詳しくは掲載しないことをお許しください。

 私どもがお邪魔した時刻には、まだ夜のメンバーが登場するには早すぎるポケットのような時間帯で、誰が使ってもいいことにしているテーブルには、高校生と思しきメンバーが自習をしておりました。何の遠慮もいらず、こうして市民が気軽に集い、使える、それが大きなインパクトでした。

 またNPO法人の運営ということと、指定管理者制度の下の制約もあり、自販機によるジュースの販売もできない、とのことです。その要望もあるのですが、逆に、出したごみ、お茶の葉も各自お持ち帰り願う、ただ用紙やフロッピなどの文具の一部は実費で「お分け」することだけなら許されている、という姿勢のほうが、すっきりしていていいのかも知れません。室内には、ゴミ箱がないのです。

 実は指定管理者に名乗りを挙げて、僅差で勝ち取ったのだとのこと。委託料は決して十分な額ではないが、スタッフもさまざまな方面、さまざまな経歴の方が応募してくださり、いまちょうど過不足なく運営しているとのことです。

 また、レギュラーの活動メンバーのみならず、ちょっと立ち寄ってみた、何かボランティアや趣味活動を始めたい、という方がふらりと訪れても、ここにはジャンル別に、市内のありとあらゆる情報が並んでいます。NPO法人の設立の仕方に関するヒナ型、実例までありました。

 裾野、と言っては失礼ですが、市民活動の生命線は、活動人口が増えていくことでしょう。年齢層も幅広く、そしてバラエティーの広さも要求されることでしょう。情報と人材とが、まさしくセンターに集結している、という感を受けました。

 丸亀市では合併により、行政の使う事務所が手狭で困っている、と聞いています。その一方では、がらんとした旧町議会に象徴されるように、使ってくれるのを待っているものもあるでしょう。

 いまさら新築を、とは申しません。こうした市民のための活動拠点の必要性を強く説いて、この問題を解決しようと私は思います。

 

 次に自治会加入率について。

 茅ヶ崎市では現在、自治会加入率が80%とのことでした。

 俗に言う、都会のヒトは薄情者で、のどかなイナカは人情が厚い、という言説は、これを見る限り、みごとに覆ったのではないでしょうか。いな、逆に、子どものいたましい事件は、実は密集した大都会でなく人の目のまばらなイナカでこそ多発していることを考えたとき、犯罪者はまことに「賢明」?な行動を取っているとくやしがるしかありません。

 先日、新聞報道でいわゆる「線引き見直し」、都市計画の変更後の土地利活用に関するものがなされていました。丸亀市にあっても人口の移動は激しく、のどかだった田園にも次々と分譲住宅が建ち、店舗ができて、そこには新しい人間のコミュニケーションの形成だけが忘れ去られたまま、人が住む、人が往来するというかたちになっているのではないでしょうか。

 ここに至り、私は、かの「線引き見直し」の際に、実は「コミュニティのあり方見直し」もセットで検討するべきだったのだ、ということに、遅まきながら、気づくのです。

 事は、これまで単純に自治会加入率比較でだけ議論されてきましたが、茅ヶ崎市、そして翌日の大和市を訪問させていただいた産物として、実は一つの考えの整理ができました。それは、地縁による自治会に代表されるような市民活動団体と、テーマ型と言われるNPO法人に象徴されるような市民活動団体とを並列に位置づけ、ここにいかに「人を集めるか」「人材を集めるか」「サービスを展開するか」といったことを統合的に考えていく仕組みが、いま、決定的に必要なのだということに思い至ったのです。

 現在の市役所のシステムで、企画部門が担当していることまでも、実は市民活動推進部局が大きく包摂しなければならないのだ、ということです。

 これで、実は胸の中で、すっきり整理ができたのです。

 さて、話を戻して、自治会加入率をうんぬんすることはこれまでも地域住民の皆さんも市役所も考え抜かれてきたことですが、「毎年1%」とされる低下率に歯止めをすることができません。

 ここは大いに、以上のような抜本的な仕組み改革を断行する必要があると考えが及び、実は、もうことが成就したかのように、私としてはうれしい気持ちなのです。さあ、これを行政の皆さんに、そしてコミュニティはじめ市民住民の活動をされている皆さんにお伝えし、ご理解いただき、「乗って」くださるようにするにはどうすればよいか。これを考えるのは、実は昨今、私の何よりの楽しみでさえあります。

 まもなく6月議会です。

 この視察報告は報告でありながら、実は質問原稿を書いているのと気分が同じです。

来春スタートに向けて総合計画の策定も進む今年度、タイミングを失することは絶対にできません。千載一遇の6月議会に、満を持して臨む決意をお示しし、妙な話ですが、これをもって報告を締めくくります。


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